法事に出向く時、参列者が持参するものの一つに香典があります。そうした場合、意外と知らないのが、香典のルール。
法事では香典の金額はいくらぐらい包むのが適当なのか、香典袋の選び方やお金の入れ方は? 表書きはどう書くのか? ここでは、法事の際に持参する香典について解説します。
目次
法事・法要でお金を持っていくのはいつ?
初七日から四十九日まで
葬儀の後、四十九日までで法事・法要でお金を持っていくのは、初七日や四十九日など、忌日法要が行われるときとなります。
初七日法要は遺族や故人に近い知人のみで行われることが多く、一般の参列者は香典を用意しないケースが多いでしょう。
ただし、通夜・葬儀・告別式の案内の際に、同日に初七日法要が行われる旨で参列を誘われた場合や、別日に行われる初七日法要に参列する場合には、香典を持参することになります。
その後、二七日(ふたなぬか)、三七日(みなぬか)、四七日(よなぬか・ししちにち)、五七日(いつなのか)、六七日(むなぬか)と、七日おきに供養が行われますが、遺族のみで行われるのが一般的です。
そして、最後に七七日(なななのか)となり、忌明け法要とも呼ばれる四十九日法要が行われます。
忌明けまでの通夜、葬儀、初七日などは、「御香典」や「御霊前」としてお金を包み、四十九日法要以降は「御仏前」とします。
四十九日の後
四十九日の後は、忌明け後の初めてのお盆となる初盆(はつぼん)・新盆(しんぼん・にいぼん・あらぼん)や一周忌、三回忌、七回忌、十三回忌といった年忌方法が行われ、主に近親者や親戚などが参列します。三回忌までは、親戚や友人・知人を呼んで法要を行うこともあります。
四十九日が明けて、初盆や年忌法要に呼ばれた場合には、「御仏前」や「御供物料(おくもつりょう)」としてお金を包んだり、「御供(ごくう)」としてお供え物を持参します。なお、四十九日が終わった後は御香典という呼び方を使わずに御仏前と呼ぶケースもあります。
参考:安心!納得!葬儀・法要・相続の備えと手続きがよくわかる本(清水頭広幸、小竹一臣 秀和システム) 116ページ
法事の香典の相場は?親・親族・知人・孫など
法事・法要で包むお金の額は、故人との関係によって決まります。近い関係にある人ほど、多めに包むのが一般的です。
相場としては、親戚・親族で1人で出席する場合、法要のみなら1万円程度、夫婦で出席する場合は、夫婦両名の名義で2万円程度です。
また会食がある場合は1人あたり5千円~1万円をプラスしたり、お供え物として品物を贈ってもよいでしょう。
知人として招かれた場合は、法要のみなら5千円~、会食に参加する場合は1万円~が相場とされています。
なお、金額として四と九がつく数字の金額は、死や苦につながる数字として避けるのがマナーです。
法事で包むお金の相場
法要のみ | 法要+会食 | |
親族・親戚で1人で出席する場合 | 1万円~ | 1万円~3万円 |
親族・親戚で夫婦連名の場合 | 2万円~ | 3~5万円 |
知人として招かれた場合 | 5千円~ | 1万円~ |
一周忌の香典に関する詳しい内容は、以下の記事をご参照ください。
故人が親の場合の香典は?
故人が自分の親の場合、遺族や施主側にもなりえる近い関係となります。
そのため、法事でも香典の相場は1~5万円と幅が広くなっています。親の法事の場合は、施主と相談して、金額を決めてもよいでしょう。
回忌ごとの香典の相場は?
法事は、葬儀以降では四十九日法要が最も規模が大きく、一周忌、三回忌、七回忌、十三回忌と年が経つにつれ規模が小さくなっていきます。
それに伴って香典の金額も少なくなっていく傾向があります。
しかしながら、一周忌以降の年忌法要の相場は、おおむね上記のようになっています。
基本的には故人との関係性と当日会食がふるまわれるかどうかによって変わってきます。
年忌法要の香典については、以下の記事もご参照ください。
法事の香典 孫の相場は?
孫が祖父母の法事に出席する場合、施主と同居しているかどうかや就労状況などによって香典の必要性や相場が変わってきます。
まず、孫が施主と同居している場合、孫は遺族になり、香典を受け取る側になるので必要ありません。
孫が施主と同居しておらず、未就労や学生の場合は親が負担するのが一般的です。
孫が社会人なら会食がなければ5千円~、会食に出席する場合は1万円~が相場となります。
施主と同居しておらず、働いていて収入があるなら、香典を渡した方がよいでしょう。
法事の香典 孫の相場
施主と同居 | 施主と同居していない | |
未成年・未就労のケース | 遺族なので不要 | 親が負担 |
社会人のケース | 遺族なので不要 | 会食なし・1万円~ 会食あり・1万円~3万円 |
法事の香典袋、水引は?
法事では、不祝儀袋(ぶしゅうぎぶくろ)に入れてお金を持参します。
不祝儀袋とは、別名香典袋とも呼ばれ、水引の色は藍銀や黒白、双銀などのものです。
水引は「結び切り」という形で、印刷された簡易なものから、豪華な水引が付いた袋まであります。
少ない金額なのに不祝儀袋だけ豪華なものを使うのは避けるべきで、持参する金額に見合った袋を用いるようにします。
包む金額と水引の選び方は、大まかには以下のようになります。
1~3万円:黒白の水引が付いたもの
5万円以上:双銀の水引が付いたもの
法事の香典、表書きの書き方は?
四十九日までの法要の表書きは「御霊前」や「御香典」、四十九日法要以降の法事・法要では「御仏前」や「御供物料」と書きます。
水引の下には中央にフルネームで会葬者の氏名を書きます。夫婦で出席する場合は、夫の氏名を書き、その左側に妻の名を添えます。
数名が連名で出すときは、水引の下に2人の名前を左から右に向かって年長順に書きます。
人数が多い場合は、代表者名を中央に書き、他一同や外一同と添えて書きます。
四十九日までの表書きは「御霊前」や「御香典」
四十九日以降の法要は「御仏前」や「御供物料」
表書きは、宗教や宗派によって変わってきます。
例えば、浄土真宗の場合は「霊」の観念がなくすぐに成仏すると考えられているため、葬儀や通夜でも「御仏前」とします。
また、中袋には、金額、住所、氏名を記入します。表書きを正しく記入するのはもちろん、誰がいくら香典を渡したのか、わかりやすいようにしておくことが大切です。
金額の書き方については、以下の記事をご参照ください。
参考:冠婚葬祭マナー大事典(学研ライフ&フーズ編集室 学研パブリッシング) 30ページ
香典袋の表書きは薄墨?濃墨?
香典袋の表書きを記入する際、薄墨を使うのは通夜~四十九日の前まででそれ以降は濃墨を使うのが一般的です。
薄墨は「涙で墨が薄れてしまった」という意味合いから、故人が亡くなって間もない時期に使われています。
そのため、悲しみが癒えてくる一周忌や三回忌の時期は濃墨で問題ありません。
また、香典袋の表書きは筆(筆ペン)で書くのが原則ですが、香典の中袋は黒いボールペンやサインペンで記入することもできます。
法事でのお金の入れ方
通夜や葬儀のお札は、顔を伏せるという意味から、裏返しに入れることがマナーとされています。
法事についても同じく不祝儀袋を使いますので、同様に裏返しに入れるようにします。また、複数枚のお札があるときは、お札の向きをきちんと揃えるようにしましょう。
不祝儀袋に入れるお札の向き
袋の表に対して、お札の裏側。顔が袋の裏側の下側に向くように入れる。
法事のお金は新札でもOK?
通夜や葬儀に包む香典に新札を用いるのは避けるべきです。これは、あらかじめ新札を用意していたと思われないようにという意味が込められています。一方で、法事の場合は、あらかじめ日程が決まっているので、新札でもよいとされています。
また別の見方で、慶事の祝儀袋に包むお札は新札で、弔事の不祝儀袋に包むお札は旧札を使うのが本来のマナーという考え方もあります。
つまり、どちらの考え方もあり、あまりこだわらなくてもよいというのが現在の状況といえるでしょう。もし旧札を入れる場合は、汚すぎるお札も失礼にあたりますので、普通に流通しているきれいめのお札を包んでおけば問題ないでしょう。
お札の入れ方について詳しい内容は、以下の記事をご参照ください。
法事の香典の包み方・渡し方は?
香典は袱紗(ふくさ)に入れて持参するのがマナーです。
袱紗が用意できない場合は、黒や紺など暗い色のハンカチで代用しましょう。
会場の受付などで香典を渡す場合、袱紗から香典袋を取り出して両手で渡します。
また、渡す際は無言ではなく「心ばかりですが仏前にお供えください」など一言添えつつ、相手が文字を読める向きで表側が見えるように渡しましょう。
一方、法事が遺族宅などで行われる場合、受付がないケースもあります。その際も自分から仏前に香典をお供えするようなことはせず、事前に施主の方に確認しましょう。
もし法事に参加できない場合はお詫びの手紙を添え、現金書留で香典を渡すのがマナーです。
参考:最新ビジュアル版冠婚葬祭お金とマナー大事典(主婦の友社) 239ページ
まとめ
・初七日や四十九日法要、初盆、年忌法要の際には香典を持参する。
・四十九日までの表書きは「御霊前」か「御香典」、四十九日法要以降は「御仏前」。
・包む金額は、故人に近い人ほど多めに、金額の数字は「四」と「九」を避ける。
・孫で働いていない場合は、香典は不要。
・香典は袱紗(ふくさ)に入れて持参する。