日本の葬儀の多くは仏式に基づいて行われますが、なかには神式で行う葬儀もあります。
神式に招かれたときはどのようにふるまえばよいのか、神式で贈る場合のマナーなどを含め、ここでは、神式で用いられる「偲び草」について解説します。
偲び草の由来
偲び草とは、故人を偲び(しのび)、追慕する思いを粗品に代えてという意味合いがあります。偲び草は、古くから和歌などに詠まれた植物の名称で、茶の子(お茶に添えるちょっとしたお菓子)と同じように、ちょっとした品物(粗品)という意味を、その名前に例えています。
「偲び草」は、仏式の以外の、特に神式の葬儀での返礼品の表書きとして用いられるのが、習わしとなっています。
神式やキリスト教式の葬儀には、そもそも「香典」がありませんので、香典返しにあたる習慣もありません。しかし、日本では、葬儀の参列者は故人を弔うために、香典にあたる「御玉串料(御霊前)」を金銭として贈ることが習わしになっているので、それらのお礼の意味を込めて、品物(偲び草)をお返しすることがいわば常識となっています。
偲び草と熨斗(のし)
神式では、仏式の四十九日に当たる「五十日祭」の後、返礼品として偲び草を贈ります。
神式(あるいはキリスト教式)でも、香典返しにあたる粗品を贈る際には、品物の上に熨斗(のし)を付けます。神式では、熨斗の表書きは「偲び草」と書くのが一般的です。
偲び草と水引
弔事の香典や香典返しなどの返礼品には、宗教の違いを問わず、結び切りの水引を用いるようにします。結び切りには、弔事のような不幸は一度切りという意味合いが込められています。
仏式と同じように、水引を中央にし、その上に「偲び草」または「偲草」と記します。また、水引の下に喪家の姓を入れます。
参考:冠婚葬祭贈答のお金マナー 表書き(主婦の友社) 145ページ
偲び草 挨拶状とお礼
神式の場合も、返礼品には、挨拶状を添えるようにします。神式では戒名がありませんので、俗名で葬儀へのお礼を述べるようにします。
また、葬儀が滞りなく済むという意味合いから、文章の中には句読点はなるべく使わないように心がけましょう。
偲び草 挨拶状の一例
先般は 亡き父(続柄) 〇〇太郎(故人俗名)の葬儀に際しまして
ご多忙中にもかかわらず会葬いただきまことにありがとうございました
おかげをもちまして〇月〇日 五十日祭を滞りなく営むことができました
つきましては 偲草のしるしまでに 心ばかりの品をお届けいたしましたので
なにとぞお納めください
本来であれば 拝眉のうえ御礼申し上げるべきところですが
書中にてご挨拶申し上げます
令和〇年〇月〇日
参考:最新版新しい葬儀・法要の進め方&マナー(主婦の友社) 97ページ
偲び草の品物
神式の香典返しにも、贈ってよいものと避けた方がよいものとがあります。神式の場合も、仏式と同じように、すぐに使ってなくなるもの(消え物)を贈るのが基本です。
神式でも五十日祭までは生臭ものを控えるので、肉や魚を贈るのは避けましょう。
また故人がお酒を好んでいたからといって、お酒を贈るのも禁物です。お酒は神式では祭事のお供えものという意味があるので、お返しの品物としては不向きです。そのほか、祭事に使われる昆布(よろこぶにつながる)などの品物も避けるべきです。
なお、どんな品物が返礼品としてタブーにあたるのか、心配な人は、カタログギフトがお勧めです。カタログギフトならば、肉や魚などの商品がギフトの中に含まれていても、自分で選んだ品物ではないので、決して失礼には当りません。
まとめ
・偲び草とは、神式あるいはキリスト教式における香典返しのこと
・偲び草にも熨斗と水引を用い、挨拶状やお礼状を添えて贈ろう
・神式の香典返しでも、肉や魚などの生臭ものは避けて、すぐなくなる「消え物」を贈るのが基本