通夜や葬儀などで香典をいただいた際に、いただいた方への感謝の気持ちを込めてお返しの品をお渡しするのが、いわゆる香典返しです。ここでは、通夜で香典をいただいたい際の香典返しの渡し方や受け取り方、さらに香典返しを辞退するときの辞退の仕方などについて解説します。
目次
通夜の香典について
本来の通夜とは、遺族やごく近い親戚など、故人と親しい人が集まって、故人の亡骸を夜通し見守るところから、通夜という呼び名が付いたといわれています。しかし最近では、故人が亡くなった翌日に通夜を行うことが多く、都合があって葬儀に出られない人が、通夜に足を運ぶということも多くなっています。
通夜に参列する場合、参列者はマナーとして香典を持参します。通夜だけに参列する場合に香典を持っていくのは当然ですが、通夜と葬儀の両方に参列する場合、どちらに香典を持っていけばいいかとなると、通夜の方に持っていく方がいいでしょう。
通夜に駆け付けたのに、香典を持たずに参列するのは、喪家に対して失礼ですし、相手の側も葬儀のときに香典を持っていくつもりということなど知りようもなく、マナーの悪い参列者と思われかねません。
参考:知らないと恥をかく冠婚葬祭のマナー常識(幸運社 PHP研究所) 52ページ
通夜での香典返しの渡し方は?
以上のようなことから喪主の側からすれば、通夜の参列者から香典を受け取ることが多いため、香典返しも通夜のうちから準備した方がいい、いわゆる「即日返し」を行うことも多くなりました。
通夜や葬儀の参列者には、会葬礼状をお渡しすることが、昔から一般的に行われています。会葬礼状と一緒に、参列者へのお礼として返礼品をお渡しするのが普通ですが、これは香典返しとは違います。
返礼品は、あくまでも参列へのお礼なので、ハンカチなどの小物やちょっとしたお菓子やお茶などを渡すのが普通です。香典返しは、頂いた香典に対してのお礼としてお返しするものなので、通夜の返礼品とは別に用意しなければなりません。
通夜の香典返しには何を用意すべきか?
香典返しの基本は、いただいた香典の額の3分の1から2分の1程度、いわゆる「半返し」といわれています。
通夜で香典を頂いた際は、参列者それぞれが幾らの香典を包んできたのは、その場で確かめるわけにはいきませんので、きちんと半返しを行うことはまず不可能です。
そこで、通夜で香典返しをお渡しするときは、いただく香典の中で最も数の多そうな金額、例えば5千円を想定して、その香典の半返しとなるように、2千円から3千円程度の品を用意します。このように通夜の香典返しは、すべての人に同じ金額の品物をお渡しするのです。
香典返しは、本来であれば、いただいたい香典の金額を確認してから、四十九日が明けたあとでお礼状と一緒にお渡しします。
即日返しの場合、5千円から1万円程度の香典を包んできた方への香典返しは済んでいますが、それ以上の高額の香典をいただいたい方へは、半返しとなるように四十九日が明けてから改めて品物をお届けするようにしましょう。その際は、もちろん即日返しの分を引いていただいたい香典の半返しとなるように品物を選びます。
参考:最新版 すぐ役立つ贈答のルールとお金の事典(21世紀マナー研究会 法研) 405ページ
通夜での香典返しの受け取り方は?
通夜で香典返しを渡されたときは、素直に受け取ればいいのですが、特に注意したいのが、お礼の言葉です。日常生活での口癖で、つい「ありがとうございます」と言いそうになりますが、通夜の場ではタブーです。
また、品物をいただいたときの癖で、恐縮してあまり何度も頭を下げるのもよくありません。品物を受け取りながら、一度だけ軽く頭を下げ、無言で受け取るか、どうしても言葉がほしいというなら「恐れ入ります」と一言だけ添えればいいでしょう。
通夜は故人が亡くなったばかりで、周囲は哀しみに満ちています。静かな動作を心がけましょう。
参考:決定版社会人のためのマナーとルール(主婦の友社) 183ページ
通夜で親族から香典をもらった場合の香典返しは?
親戚といえども、香典返しは行うのが普通です。一般の方と区別する必要はないと思います。ただし、親戚の場合の香典は高額になりやすいので、どのようにすればよいのか、判断に迷うことがあります。
例えば、香典に10万円をいただいた場合、半返しとなると五万円程度のものを用意しなければなりません。その場合は無理に半返しにしなくてもよいと思います。
高額の香典を包むのは、包んだ方が「それが常識」と心得ていることもありますが、喪家のために少しでも役にたててほしいと思って包むことがほとんどです。4分の1程度の香典返しになっても、感謝の気持ちを込めて、きちんとしたお礼状を添えれば相手もきっと満足されるでしょう。
ただ、親族によって独自のルールがある場合もあります。判断に迷ったときは、「〇〇さんの家からは10万円いただいたけれど、いくらぐらいの品物をお返しすればいいかな?」と別の親戚の人に尋ねてみるのも手です。
通夜で会社から香典をもらった場合の香典返しは?
会社から香典をいただいた場合、香典返しは会社の規則として受け取らないということもあり得ます。事前に確認することができれば、確認しておくとよいでしょう。
また、香典返しを受け取らないということであれば、香典を渡す際に、そのことを告げている可能性もあります。香典返しを受け取らないことがわかっている場合は、無理に送ってしまうと返って迷惑がかかります。その場合、香典をいただいたことへのお礼状だけを送っておくとよいでしょう。
会社として香典返しを送っても特に問題がない場合、考え方は一般の人と同じです。いただいた香典の半返しとなるよう、香典返しをお渡しするようにしましょう。
通夜と告別式の両方で香典をもらった場合はどうする?
通夜と告別式の両方で香典をいただくことがあります。その場合、通夜で即日返しをしたのなら、後日、記帳を確認していただいた合計の金額の半返しとなるよう、香典返しを送るようにします。合計額がかなりの高額になった場合、特に親戚でない一般の方からのときは、きちんと半返しになるように送った方が、相手の心証もよいものです。
できれば、通夜と告別式で香典をいただいたことへの感謝を述べた「手書き」のお礼状を添えてみることをお勧めします。
通夜での香典返しを辞退するには
会社からの香典の場合のように、会社のルールとして香典返しを受け取れないという場合は、香典を渡す際に、あらかじめ受付などで伝えておいた方がいいでしょう。
ただ、口頭で伝えたのでは、受付の方も多忙な中でのことなので、忘れてしまうこともあります。香典返しは辞退することを、香典袋の中に「香典返しは辞退させていただきます」と一筆書いた短冊などを入れておくとよいでしょう。
なお、香典ならびに香典返しはお互いの相互扶助の考えから成り立ちます。以上のような問題がなければ、無理に辞退などせず、香典返しは気持ちよく受け取るのが礼儀です。
まとめ
・通夜の香典返しは、会葬御礼品とは別。即日返しの場合も「半返し」となるよう後日お返ししよう。
・親戚も一般の人と考え方は同じ。香典をいただいたことへの感謝の気持ちを込めて、香典返しをお渡ししよう。
・会社の決まりなど、特別な理由がない限り、香典返しは辞退せずに、気持ちよく受け取るのがマナー。