「大安吉日なので結婚式場が混雑」「仏滅なので日取りが悪い」など、誰でも一度は聞いたことがあるものです。この大安や仏滅の意味、ご存じですか? 法事にはどの日が向いているのか、正確に知っていますか? ここでは、特に法事における六曜の意味や日程の決め方について解説します。
目次
六曜の由来は?
そもそも六曜とは何でしょうか。
カレンダーによっては、日付の横に、大安や仏滅のほか、「赤口」とか「友引」などの文字が書かれているのをご存じの方も多いはずです。六曜は読んで字ごとく、「先勝」「友引」「先負」「仏滅」「大安」「赤口」の6つの曜日で成り立っており、日曜から土曜までの七曜と同じく、歴注と呼ばれる暦に付けられた事項の一種です。
古代の中国で生まれたといわれますが、いつ頃誰が作ったのかは、さまざまな説があり、不明です。日本に伝わったのは鎌倉時代といわれ、歴注として流行したのは、江戸時代に入ってから。
六曜自体の名称もいろいろと変わっており、現在まで伝わる6つの呼び名になったのは、江戸時代の後期になってからのようです。それぞれの曜ごとに「吉」や「凶」という意味が付けられ、庶民の間では、その日の運勢を占うために利用されてきました。
六曜の種類と意味は?
六曜は、先に書いた通り「先勝」「友引」「先負」「仏滅」「大安」「赤口」の6種類のみで、日曜から土曜と同じように、先勝から赤口へと順番に繰り返していきます。現在の一週間は7日なので、六曜は一日ずつずれていくことになります。
ただし、旧暦の毎月1日の六曜だけは決まっており、新暦のカレンダーでは、必ずしも順番通りではなく、旧暦の1日で変わってしまうことがあります。
ちなみに旧暦の1日の六曜は1月・7月は「先勝」、2月・8月は「友引」、3月・9月は「先負」、4月・10月は「仏滅」、5月・11月は「大安」、6月・12月は「赤口」となっています。
六曜それぞれの意味
六曜のそれぞれの意味は、次の通りです。
・先勝(せんしょう・さきがち・せんかち):先んずれば勝つという意味。この日は、早くことを済ませた方がいいとされる。すなわち、午前中にことを済ますのが吉で、午後に行うのは凶となる。
・友引(ともびき):共に引き分けという意味。勝負の決着がつかない日とされる。元々の意味を離れ、漢字の読みから「友が引かれる」という意味に捉えるようになった。特に「友が冥途に引かれる」という意味から、昔から多くの地域で、この日は葬儀を避ける傾向にある。
・先負(さきまけ・せんぶ・せんぷ):急な用事は避けるべきという日。先勝に対応した日で、午前中に行うのは凶、午後に行うのが吉とされる。
・仏滅(ぶつめつ):六曜における大凶の日。すべてのことが虚しいということから「物滅」とも書いたが、仏の功徳も効かないということから「仏滅」の字を当てるようになったという。よく誤解されているが、仏が滅した日とはまったく関係がない。
・大安(たいあん):六曜の中で最も吉日の日。結婚式など縁起の良いことを行う日として人気がある。
・赤口(しゃっこう・しゃっく):正午の前後(午前11時頃から午後1時頃まで)を除いて凶とされる日。赤という漢字から、火の元などに注意せよといういわれもある。
参考:旧暦で今をたのしむ「暮らし歳時記」(松村賢治 PHP研究所) 118ページ
赤口、先勝に法事を行っていい?
四十九日や一周忌などの法事は、命日に加えて六曜を考慮して日程を選ぶことが多くあります。
さて、六曜で日取りを選ぶときにやっかいなのは、それぞれ六曜についてのどう解釈するか、人によってバラバラなことです。法事に選んだ日が「赤口」や「先勝」だったとき、誰かが「その日は縁起が悪い」というかもしれません。
しかし、結論からいえば、どちらの日であっても法事を行うことはできます。
「赤口」は何をやってもうまくいかない日、いわゆる凶の日なので、祝い事を避ける傾向にあります。法事は不祝儀なので、赤口に法事を営むことは特に問題はありません。
「先勝」は、午前中に勝負ごとなどをするには、吉という日です。法事は勝負事とは違いますので、午前であろうと午後であろうと特に気にする必要はありません。
法事の日取り、六曜は考慮すべき?
六曜を「迷信だ」といってしまえばそれまでです。本来、中国で生まれた六曜と仏教とは関係がないことは確かです。お寺に聞けば、どの日に法事を行って問題はないと、アドバイスしてくれるでしょう。
しかし、日取りなどに気を使い、験(げん)をかつぐというのは、心理的にも安心するものですし、迷信として頭から否定するのもどうかと思います。この理屈からいえば、通夜や葬儀、さらに法事なども、仏教などの宗教にのっとって行うことさえ、否定されることになります。
法事で特に気を付けるべき日は、「友引」です。この日は、やはり縁起を担ぎ、場所によっては火葬場が休みのところもまだたくさんあります。
特に法事などは、自分だけで行うものでありません。特に気にすることはないというのは確かですが、家族や親戚、さらに知人などを呼んで行うのであれば、集まる人の心情を汲んで日取りを決める方がよいと思います。
参考:心のこもった葬儀・法要のあいさつと手紙マナー&文例集(杉本祐子 主婦の友社) 14ページ
真言宗の法事と六曜の関係は?
真言宗は、空海(弘法大師)が唐に渡って修行をしたのち、高野山に上って開いた密教です。
六曜と仏教とは特に関係がないように、真言宗の法事は六曜とは特に関係はありません。
しかし、日本には六曜より以前に、縁起をかつぐ歴注の一つとして、弘法大師が中国より持ち帰った宿曜経として、二十七宿(古法)というものがありました。江戸時代の改暦により、二十七宿は二十八宿へと変わりましたが、この二十八宿によって、葬儀や法事にふさわしい日(宿)を決めるという風習が今でも一部に残っています。
法事の日程は週末にずらしてもいい?
法事の日程を決める際に、もっとも重要なことは、命日です。命日を過ぎてから法事を行うことは避けるべきです。しかし、命日が平日に当たる場合、参列者の都合を考えると法事を行うことがなかなか難しくなります。
できるだけ多くの人に参列してほしいと考えれば、できるだけ土日などの週末の日を選ぶようにします。命日よりも前の土日が六曜であまりよくないとしても、命日を過ぎてから法事を行うよりはよいといえます。
何かと忙しいことはお互いにわかっているはずですから、六曜よりもみんなが集まりやすい週末に都合をつけたことは、参列者にも理解していただけるはずです。
参考:安心!納得!葬儀・法要・相続の備えと手続きがよくわかる本(清水頭広幸、小竹一臣 秀和システム) 118ページ
一周忌など回忌法要と六曜の関係は?
これまでにご説明してきた通り、仏教と六曜とは直接的な関係はありません。
吉日、凶日というのも、世間一般での心理的な問題といえます。もちろん、結婚式を大安の日を選ぶのは、気分的に良いことは確かですし、数ある日程の中で、わざわざ仏滅を選ぶ必要はないといえます。
しかし、あえて言えば、命日の日を選ぶことはできません。偶然その日が大安だったり、友引だったりするわけです。
一周忌などの回忌法要も、特に六曜を気にして選ぶことはありません。命日が平日に当たるのであれば、やはり人々が集まりやすい週末などの日を選べばいいでしょう。その際も、やはり命日を過ぎないことが鉄則です。
まとめ
・六曜とは、6つの種類からなる暦に付けられる歴注と呼ばれる事項の一種。
・昔から、その日の運勢を占うために用いられ、冠婚葬祭にも利用されてきた。
・六曜と仏教とは直接の関係はないが、法要の日取りは世間的な考え方も考慮に入れて決めるようにしよう。