四十九日の法要が済むと、次に行われる大きな法要として「百箇日法要」があります。四十九日のあとは一周忌と思われがちですが、百箇日は仏様にとって実は大切な法要なのです。ここでは、百箇日法要についての解説と、香典やお供え、挨拶などのマナーについて紹介します。
目次
百箇日法要とは?
百箇日(ひゃっかにち)法要とは、読んで字のごとく故人が亡くなってから百日目の法要のことをいいます。四十九日は比較的大きな法要を行うため、百箇日法要は省略されることも多いのですが、この日は、故人がその家の先祖として祀られる最初の法要であり、とても重要です。
そもそも法要とは何のために行うのでしょうか。法要は故人を偲ぶための大切な場であり、ふだんあまり集まることの少ない親族が一堂に会して語り合う機会でもあるわけです。つまり、法要とは故人のためにあるのと同時に、現世を生きる私たちのためにもあるといえるのです。
百箇日法要は省略されることが多いと聞いたので特に何もしないとお決めにならず、この記事をご覧になられたのなら、百箇日法要を営まることをぜひご検討されてはいかがでしょうか。
百箇日法要の別名
百箇日法要は、別名を「卒哭忌(そっこくき)」といいます。難しい漢字ですが、声をあげて激しく嘆き悲しむことを慟哭(どうこく)といいますが、哭とはこの意味を指し、卒は卒業の「そつ」なので、卒哭忌とは、故人が亡くなったことを嘆き悲しむのをこれで終わりにするという意味が込められているわけです。
参考:生死のなかに仏あり: 天台宗僧侶が教える「死後の世界」と「現代法事考」(渡辺明照)
百箇日法要の準備は?
百箇日法要の規模・招く人の範囲
では百箇日法要はどのように執り行うのでしょうか。法要の行い方は、四十九日法要と特に変わることはありません。どれぐらいの規模で行うのか、どれぐらいの人を招くのかによって準備の仕方が決まります。
もっとも小規模な法要としては家族のみで行う場合です。次に規模を広げると、親戚を招いて行うことになります。四十九日の法要では親戚まで招いて行う場合が多いでしょうから、規模としては同じ程度になるでしょう。
百箇日法要に知人や友人まで範囲を広げて呼ぶことは少ないでしょう。法要を行うことを知ってどうしても参列したいという方がいれば別ですが、四十九日以降の法要は、家族、あるいは親戚の集まりが中心と考えて問題ないでしょう。
百箇日法要を行う場所
自宅あるいは菩提寺で僧侶を呼んで読経してもらい、参列者全員で焼香を行います。法要としては読経がメインとなります。
家族以外の親戚(あるいは知人)を招いた場合は、法要のあとに会食を行うケースが多いでしょう。遺族にとっては、四十九日よりも時が経ち、以前によりも落ち着いた気持ちで故人について語りえる機会となるはずです。
会食にレストランなどを使うときは、あらかじめ予約を取っておきましょう。予約の際は法要のお斎(とき)で用いることを伝えておくようにします。
百箇日法要は、四十九日以降の法事なので、特に禁じられている料理はありません。ただし鯛やイセエビなど、慶事で用いられる食材は法事の場にはふさわしくありませんので、避けてもらいましょう。
自宅で法事を行う場合は、家族の手を煩わせないよう、仕出し弁当などを注文するとよいでしょう。
百箇日法要の服装は?
法要の服装の原則は喪服です。家族だけで法要を営む場合もできるだけ喪服を着用することをお勧めします。法要は日常の行事ではありません。百箇日法要だから、多少ラフな格好でもよいという考えは感心しません。故人の供養の場であることを心得、できるだけきちんとした格好をすべきだと考えます。
ただし、正喪服とされるモーニングや紋付き袴を用意する必要はありません。黒の礼服(スーツ)に弔事用の黒いネクタイなど、略式の喪服でいいでしょう。
百日法要に親族として招かれた場合、略式の喪服を着用します。参列者が施主よりも上の喪服を着てはマナーに反しますから、正喪服は着るべきではありません。知人として招かれた場合、やはり略式の喪服か、ダークスーツなどの地味な平服を着用します。
参考:新版葬儀・法要のあいさつすぐに使える実例付き(藤村英和 西東社) 168ページ
施主側と参列者それぞれの挨拶
四十九日の法要を経験されている方は、それに準じた挨拶を心がければいいでしょう。長めの挨拶は必要ありません。住職が読経を始める前に、法要の始まりを告げる挨拶を手短に行います。次に挨拶の一例を挙げておきます。
故人の百日法要に集まったことは誰もが知っていますので、話すのに自信のない人は、省略して構わないと思います。
なお、葬儀のように参列者が代表で挨拶をすることはまずありません。
香典を渡すときや香典返しを頂いたときは、無言で軽く頭を下げるだけでいいでしょう。「この度は(ご愁傷さまです)」とか「ありがとうございます」など、むしろうっかり禁句を口にすることの方を避けたいものです。
ちなみに法事で香典や供物をお渡しするときは「御仏前にお供えください」、香典返しを頂いたときは「恐縮です」が正しい挨拶です。
百箇日法要の香典の相場
百箇日法要でも参列する際は香典が必要です。すでに四十九日法要は済んでいますから、表書きは御霊前ではなく、「御仏前」になります。
香典の金額の相場は、故人との関係で変わってきます。親族の場合、故人の子供であれば、5万円以上、故人の兄弟であれば2万円から5万円程度です。 知人であれば5千円から2万円ぐらいでしょう。会食がある場合は、会食代を含めた金額を用意するようにしましょう。
参考:はじめての喪主 葬儀・葬儀後マニュアル(吉川美津子 秀和システム) 192ページ
百箇日法要に適したお供えとは?
百箇日法要だけでなく、法要にはお供えとしてふさわしい品物があります。いわゆる「消えもの」をお供えするようにします。果物やお茶、お菓子などは、後から参列者に配ることもできるので、貰った方も重宝します。
また生花もお供えとしてよく用いられます。基本的に白を基調とした花を選ぶようにしましょう。故人が好きであっても派手な色使いのバラなどの花は法事にはふさわしくありません。
また、殺生を連想させる魚や肉などの「生臭もの」も避けましょう。
百箇日法要のお返しのマナー
百箇日法要を行う際は、あらかじめ人数分のお返しを用意しておくようにします。
品物としては他の法事と同じく「消えもの」がよいでしょう。お菓子やお茶、タオルなどが一般的です。季節によっては、そうめんやうどんなども喜ばれますが、持ち帰る人のことを考えて、あまり重くならない品物を選ぶようにしましょう。
なお、表書きは「志」や「粗供養」とし、水引は黒白か、黄白の結びきりにします。
まとめ
・百箇日法要は、故人にとっても遺族にとっても大切な法要の一つ。
・百箇日法要の服装は、基本的に黒を基調とした略式の礼服で臨もう。
・百箇日法要のお供えや香典のお返しには「消えもの」を用意しょう。