故人が亡くなってから家族や親類など近しい人が集まって行う別れの儀には、通夜や告別式があります。では通夜と告別式はどう違うのでしょうか。ここでは通夜と告別式の違いについてや、参列の仕方、御香典の渡し方などを解説します。
目次
通夜と告別式の違い
通夜とは、故人を葬る前に親族や知人が夜通しで死者を見守ることを意味していました。つまり、葬儀の手順として最初に行われる儀式のことを指しています。
一方、告別式は、「葬儀」が済んでから故人に別れを告げる儀式のことをいいます。中には、通夜と告別式を合わせた儀式を「葬儀」と呼ぶこともありますが、厳密には正しくありません。
「葬式」と「葬儀」を同じ意味で用いている場合もあるので、さらにややこしいのですが、順番としては、最初に「通夜」を行い「葬式」のあとで最後に「告別式」が執り行われると考えておけばいいでしょう。
参考:これだけ知っておけば大丈夫!「ビジネスマナー」のきほん(TNB編集部 翔泳社) 137ページ
通夜、告別式の日程の決め方
一般的には、亡くなった当日に「仮通夜」を行い、翌日に「本通夜」を行います。
地域によっては、仮通夜と本通夜の区別はなく、亡くなった当日を「通夜」とすることもあります。また、葬儀の日取りについては、かつては遺体が傷みやすいこともあり、通夜の翌日には行っていました。
ただし、現在では遺族の都合や、火葬場の空き具合、葬儀場の手配など、さまざまな都合により、遺体を安置したまま亡くなってから数日後に通夜を行うケースもあります。
ところで、通夜や葬儀の日取りは「友引」の日を避けるのが昔からの習わしになっています。「友を引く」というのは縁起が悪いということから来ており、実際に友引の日は火葬場が休みのことも多いようです。
このように通夜や告別式の日程の決め方に特に決まりはなく、 それぞれの都合を考え合わせながら、亡くなってからできるだけ早い日にちで行うということになります。
通夜・告別式のさまざまなケース
多忙な現代社会に合わせて、通夜と葬儀、告別式を一日で行う「1日葬」という形式もあります。
それとは逆に、本来の意味の「告別式」を通夜や葬儀とは別の日取りを設けて行うケースもあります。著名人によく見られる「お別れの会」などもその一つです。一般の人の間でも、参列者の都合がすぐにつかない場合には、通夜と葬儀は家族だけで行い、後日改めて告別式を行い、故人をきちんと見送るというスタイルです。
通夜と告別式の両方に参列すべき?
通夜は、故人と親しかった人が別れを惜しむ場なので、プライベートで深い付き合いのない人は遠慮した方がいいのではないかと考える人もいます。
例えば、仕事関係で付き合いのある人であれば、一般の参列者として告別式に出席することなります。
しかし、告別式は日中に行われることが多いので、時間的にどうしても都合がつかないというのであれば、通夜のみであっても失礼にはあたりません。
むしろ最近では、仕事関係など、プライベートで付き合いがない人や一般の参列者は、通夜の方に出席すべきと考える人もいるようです。
先に述べたように、亡くなってから数日後に通夜が行われる場合は急な話ではなく、18時頃から行われる通夜の方が、仕事を終えてからなので参列しやすいこともあって特に都市部では主流となっています。
参考:最新ビジュアル版 冠婚葬祭お金とマナー大事典(主婦の友社) 228ページ
友人は告別式に参列すべきか?
故人と親しい関係にある知人、友人であれば、通夜に駆け付けるのは当然でありマナー以前の問題です。
通夜に参列した場合は、告別式にも参列すべきでしょう。また、通夜に参列できなかった場合は、告別式にはできるだけ参列したいものです。
ただし、社会人であれば、仕事の都合などでどうしても出られないこともあります。通夜には参列できて告別式には参列できないという場合、通夜の席で遺族にその旨をきちんと伝えておきましょう。
また、後日、告別式に出られなかったことを改めて詫びるようにしましょう。
通夜と告別式、香典はどちらで渡す?
通夜と告別式の両方に出席するのであれば、香典はどちらか一方で渡せばよいことになっています。両方で出す必要はありません。
どちらで渡すべきかは地域や風習によって異なるようですが、通夜と告別式の両方に出席するのであれば、最初に参列することになる通夜で渡した方が無難です。
手ぶらで通夜に参列した際、「香典は葬儀(あるいは告別式)に持参します」と受付で言い訳を述べるのは勇気がいりますし、受付がこちらの言付けをチェックし忘れたり、覚えていないことも十分あり得ます。
また、「告別式には香典を忘れないように」と、そわそわした気分でいるのも嫌なものですし、通夜に参列したあとで、急病で倒れたり急な用事が入ったりなど、何らかの理由で告別式に出られなくなることも考えられます。
亡くなった当日や次の日が通夜というような急なケースで香典の用意ができていない場合は別ですが、どちらで渡せばいいのか迷う場合は、通夜で渡しておくことをおすすめします。
参列する際の服装や持ち物は?
前日までにその日が通夜であることを知らされ、社会人で仕事を終えてから駆け付けるという場合であれば、喪服や準礼服で参列するのが無難です。
故人が亡くなったばかりで急な知らせを受けた場合は、平服でも構いません。昼間着用しているスーツでネクタイを弔事用の黒に替えて出席すればよいでしょう。
女性の場合は、指輪やネックレス、イヤリングなどのアクセサリー類をできるだけ外してバックなどにしまっておきます。
告別式に参列する場合は、男女ともに、きちんと喪服を着るのがマナーです。
参考:デキる社会人になる!基本のビジネスマナー(西東社) 192ページ
香典を渡すタイミングや焼香の仕方について
香典は受付があれば、受付で渡すようにします。受付では、香典袋の正面を受付側に向けて渡します。香典の受け渡しは記帳と一緒に行いますが、どちらが先になるかは会場によって異なりますので、その順番に従いましょう。
また自宅などで通夜を執り行うために受付がない場合などは、ご霊前にお供えするようにします。その際、香典袋の向きは正面を自分の方に向けてお供えします。受付で渡すときとは逆になるので注意しましょう。
焼香の仕方については、宗派によって違いがあります。自分の宗派がある場合は、それに従って行えばよいわけですが、特に宗派がない場合、1回あるいは3回行います。実のところ、回数は問題ではなく、故人の冥福を祈って丁寧に行うことが一番大切です。
まとめ
・故人が亡くなって最初に行うのが「通夜」、最後に行うのが「告別式」と覚えておこう。
・最近は、一般の人は通夜へ、故人と親しかった人は告別式への参列が主流。
・香典はどちらで渡してもよいが、通夜と告別式の両方に参列するなら、通夜で渡すのがおすすめ。