葬儀に欠かせないものの一つに香典があります。葬儀に香典を持参していくことは、特に相手からの断りがない限り、葬儀に参列する際の常識といえるでしょう。ところで香典の渡し方となると、これが正しいといえる人は意外と少ないのではないでしょうか。ここでは、香典の渡し方や、渡すときの言葉などについて解説します。
目次
葬式での渡し方と言葉
葬儀場の場合
葬儀場で葬儀を行う場合、たいていは入口に受付が設けられていることが多いといえます。ほとんどの受付には記帳台と受付を担当している方がいるかと思います。場所によって順番が異なることがありますが、一般的な順序としては、まず記帳を済ませてから、香典袋の文字が相手に読めるような向きにして両手で差し出します。
お悔やみの言葉としては
の一言でいいでしょう。相手が顔見知りや遺族の場合でも、受付で長いお悔やみの言葉を述べるのは、むしろ失礼に当たります。
お悔やみの言葉は、はっきり述べる必要はありません。語尾を濁すように聞き取れないほどの小声で構いません。
参考:社会人の常識がよくわかるビジネスマナー(クレスコパートナーズ 日本文芸社) 183ページ
自宅の場合
受付が設けられていない葬儀場や、あるいは自宅で葬儀が行われた場合は、拝礼の際、ご霊前に供えるようにします。ご霊前に供えるときは、香典袋の表書きの文字が、自分が読める向きにして供えます。
また、自宅の一室に壇が設けられ、隣に遺族が座っているときは、直接手渡ししてもいいでしょう。遺族に手渡す場合は、相手が読める向きにして両手で差し出します。お悔やみの言葉は「このたびはご愁傷さまです」の一言で済ませるようにします。
相手が遺族の場合でも、葬儀の場では、長い言葉は慎むようにしましょう。個人的な遺族への励ましやお悔やみの言葉は、葬儀を終えた後の会食の席などで述べるのがマナーです。
後日香典を渡す場合の言葉は?
通夜や葬儀に間に合わず、後日、遺族のもとへ伺うこともあるかと思います。その場合も、香典を持参するのはマナーです。渡し方の基本は葬儀のときと一緒です。香典袋の表書きを遺族が読める向きにして、両手で差し出します。その際、お悔やみの言葉を一緒に述べましょう。
葬儀はすでに済んでいますので、必要以上に小声で述べる必要はありませんが、あまり元気に話すのは常識的ではありません。
一例としては
くらいの言葉でいいかと思います。葬儀に参列できなかった理由をくどくど述べる必要はありません。
ただし、お悔やみの言葉として使う「ご霊前」は亡くなってから四十九日までが一般的です。四十九日過ぎの場合、「ご仏前」という方が適当なので注意しましょう。また、浄土真宗のように、亡くなった直後から「ご仏前」と呼ぶ宗派もあるので、よくわからない場合は「こちらをお供えください」と言いましょう。
参考:冠婚葬祭マナー大事典(学研ライフ&フーズ編集室 学研パブリッシング) 308ページ
四十九日法要での渡し方と言葉
四十九日の香典は、一般的には、表書きも「御霊前」ではなく「御仏前」となります。
すでに葬儀からかなりの月日が経っていますので、挨拶する際は、葬儀で用いた「ご愁傷様です」や「お悔やみ申し上げます」などの言葉は使わないようにしましょう。
受付があれば、葬儀のときと同じように両手で香典を差し出すようにしましょう。挨拶としては軽く頭を下げる程度でもいいですし、一言添えたいのなら
でいいでしょう。
「ありがとう」はお礼の言葉なので、葬儀では禁句とする考え方もありますが、四十九日の法要では、それほど気にすることはありません。それでも気になるという人は、「お招きいただき、恐れ入ります」や「恐縮です」という言い方に変えてみましょう。
親族への香典の渡し方
故人が親族の場合、受付で香典を渡すのは、他の葬儀の場合と同じです。親族であっても、葬儀という場ではきちんとしたマナーで香典を渡さなければいけません。記帳したあと、やはり香典袋の表書きが相手に読める向きにして両手で差し出します。
ただし、受付の人が他人の場合、故人の親族である自分が「ご愁傷様です」などのお悔やみの言葉を述べる必要はありません。受付の人に対しては、「ご苦労さまです」とねぎらいの言葉をかけるようにします。
職場での香典の渡し方
職場で香典を渡す際、最も気を付けなくてはいけないのは、周りの人と条件を同じにするということです。同じ職場の中で、金額がバラバラでは、後々問題の種を残すことにもなりかねません。また、職場の規模にもよりますが、同じ部署で香典を出した人と出さない人があっても、同様に問題です。
特に職場では、同僚の家族に不幸があった場合などに、自分だけで勝手に判断して香典を用意するようなことはせず、直属の上司に相談すべきでしょう。
中には会社の福利厚生の一つとして金額を決めて香典を出すという場合もあります。有志として数人で出す場合も、同じ金額を募って連名で出すなど、きちんと相談して渡すようにしましょう。後日職場で渡す場合も、香典袋に包み、
などのお悔やみの言葉とともに渡すようにします。
袱紗(ふくさ)で香典を包んだ場合の渡し方
香典を手渡しする際は、できるだけ袱紗に包んで渡すようにします。香典袋を裸のままポケットや鞄などの中に入れて持ち歩くのは、あまりよいマナーとは言えません。汚れを避けるという意味でも袱紗に包んでおいた方が安心です。
袱紗を使って香典を渡す場合、袱紗のまま渡すことはもちろんいけません。そうかといって渡すだいぶ前から香典袋を取り出しておくのも関心しません。
袱紗で渡す場合は、相手に渡す直前まで袱紗に包んだままでおき、手渡すときにゆっくりと開いてから、袱紗を香典袋と同じぐらいの大きさにたたみ、その上で相手の方へ表書きの文字が読めるように向きを整えてから、差し出すようします。普段はあまり行わない動作ですので、いざという時にまごつかないよう、袱紗を購入した際、事前に手順をおさらいしておくといいでしょう。
参考:[イラスト図解]〈小笠原流〉日本の礼儀作法・しきたり(柴崎直人 PHP研究所) 6ページ
まとめ
・香典袋の渡し方は、相手に文字が読める向きで、両手で差し出すのが基本。
・香典を渡すときは、お悔やみの言葉を簡潔に添えること。
・香典を手渡しするときは、できるだけ袱紗を使って渡すようにしよう。