規模の大きな会社では、社葬という会社が主催となった葬儀を行うことがあります。こうした社葬に参列する場合、香典はどのように渡すべきなのか、また香典返しの扱いはどのようになるのか、ここでは社葬の香典返しの渡し方や、香典返しなどについて詳しく解説します。
目次
社葬とは、どんな場合に行う?
社葬は、会社の創業者や会長、社長など、会社に大きな貢献をもたらした人が亡くなった場合に執り行う葬儀です。遺族や近親者が施主を務める代わりに、故人がいた会社が施主を務めます。
社葬は、近親者による個人的な葬儀や密葬を行った数日後に行われるのが通常です。「社葬」という呼び名のほかに、「お別れの会」などという呼び名で行われることもあります。また、一般的な葬儀を親族と会社の合同で行う「合同葬」なども、社葬の一種として含めることもあります。
社葬は、個人的な葬儀に比べて会葬者の数も多く、大規模に行われることが多いようです。しかし、「社葬」という定義は規模の大小ではなく、施主が会社法人であり、会社の経費を用いて行うことにあります。どんなに規模が大きくても、個人的にお金を出し合って葬儀を行うのであれば、それは社葬には当たらず、「個人葬」ということになります。
社葬はいわば、その会社の得意先だけでなく、広く社会に対しての宣伝効果やアピールも含まれているため、どのように行うかで会社への評価にもつながってきます。
参考:新装版 短いスピーチあいさつ実例大事典 文例1500(主婦の友社) 618ページ
社葬の香典は誰のもの? 親族か会社か?
社葬では、香典を受け付けている場合と受け付けていない場合の2つがあります。特に「お別れの会」のように故人を偲ぶことが中心となる葬儀などは、会場での香典辞退などもあるので、事前の告知などで調べておくようにしましょう。ここでは、香典を受け取る社葬のケースについて説明しましょう。
社葬で香典を受け取る場合、基本的に受け取った香典は親族へと手渡すのが普通です。社葬の施主は、確かに会社ではありますが、香典は「相互扶助」という考え方が根底にあり、あくまでも、故人の遺族が受け取るものであり、会社が受け取るものではないからです。
香典を会社が受け取ると課税対象になる?
また、香典を会社が受け取るべきではないという理由としては、遺族への配慮とは別に税務上の理由があげられます。
会社が香典を受け取った場合、そのお金は「雑収入」として税務処理され、課税対象となります。もちろん、会社の雑収入とすることは、法的には何ら問題はありませんが、会社の収入として計上することは会社にとって得でなく、後々の香典返しなどを考えると、課税される分、かえって損となります。
なお、会葬者が持参した香典については、法人の収入とせず、遺族の収入にすることは、国税庁でも認められています。なお、遺族が受け取った香典は、社会的に常識的な範囲であれば課税対象となることはありません。
参考:同族会社の節税マニュアル(長谷川麻子 すばる舎) 167ページ
社葬の香典の相場は? 会長や社長など
ところで、「社葬」の場合の香典の相場はどれぐらいになるのでしょうか?これは相手との関係性によってかなり異なってきます。
例えば、故人が創業者や会長、社長などのトップクラスの場合、一般的な相場としては、3万円から5万程度となりますが、会社の付き合いが深い場合や、香典を出す側もトップクラスとういことであれば、相場は上がっていきます。
相手との親交が深ければ、5万円から10万円、場合によっては20万円程度まで用意することもあるでしょう。
なお、業務に関連する取引先の葬儀ということであれば、香典の費用は「接待交際費」として経費として参入することができます。ただし、香典の場合、領収書がないので、葬儀に参列したことを証明できる葬儀の案内状(コピー)などを残しておくようにしましょう。
社葬の香典袋の書き方は?
香典の表書きは、相手の宗教や宗派に合わせて書くのがマナーです。
仏式の葬儀であれば「御霊前」と記すケースが多いですが、「お別れの会」など、宗教や宗派がわからないこともあります。四十九日前であれば一般的には「御霊前」と書きますが、浄土宗ではタブーとされていることもあるので、その場合は「御仏前」または「御香典」と記します。
水引の下には、香典を出す人の名前を書きます。会社を代表して出すのであれば、社名となります。また、個人で出すのであれば、個人名を書きます。ただし「社葬」では個人名では同姓同名がいた場合、誰が出したものか判別がつかないこともあるので、きちんと会社名、さらに部署や役職名があればそうした情報などを添えた方が相手にも親切です。
また、上司など、誰かの代理で参列する場合は、上司の名前の左横に「代」の字を添えるようします。こうすることで、香典を出した本人は葬儀に参列できなかったことを示すことができます。
社葬で香典返しは必要?
香典返しは香典を頂いたことへのお礼として贈るものです。そもそも香典自体が義務や決まりというものではありません。社葬で会社が香典を受け取ったのなら、香典を頂いたことへのお礼として、香典返しを会社側が用意するのは、当然のことといえるでしょう。
ただし、香典を会社が受け取らず、遺族にお渡しした場合であれば、香典返しを用意するのは遺族の側ということになります。
社葬の香典返しは会計上の扱いは?
社葬で会社が香典を受け取った場合、先に述べたように、「雑収入」となって課税対象となります。
一方、香典返しについては、経費として計上することはできません。
社葬で経費として認められるのは、会場費や飲食代、祭壇や祭具、社葬を行うことを通知する通信費など、社葬を行うために必要と項目に限られています。受け取った香典から税金を差し引いて香典返しを行うのであれば、場合によっては損失をこうむってしまいます。
また、遺族に香典を渡した場合に、香典返しの費用を会社で負担する場合にも注意が必要です。遺族へ会社が贈与したとみなされ、贈与税が加算されることもあります。
こうしたことから、香典と香典返しのやりとりに関しては、会社は関与せず、遺族の側に任せるのがベストといえるでしょう。
参考:「LLC」で賢く稼ぐ! アパート・マンション経営(中森勇人 すばる舎) 105ページ
まとめ
・社葬の香典の受け取り先は会社でも親族でもよいが、親族に渡すのがベスト。
・会社が香典を受け取った場合は、「雑収入」とみなされる課税対象となる。
・会社が香典返しを行う場合は、経費とはならないので注意が必要。