香典をいただいたときにお返しする「香典返し」。香典返しに贈る品物を思い浮かべた時に「あの家の方はお酒が好きだし、お酒なんかどうだろう」「ただ、香典返しに日本酒やビール、ワインなどのお酒を贈ってもよかったんだっけ?」と考えることがあります。ここでは、香典返しのお酒について解説します。
目次
香典返しにお酒を贈ってもいい?
まず神道では、お酒はお神酒(おみき)という言葉があるように神様にお供えする際に用いられます。
一方、仏教では不飲酒戒(ふおんじゅかい)と言ってお酒を飲んではいけなという戒めがあり、仏事では避けるのが昔からの風習になっています。
そのため香典返しの品物としてお酒を贈ることは、一般的にはタブーとされています。
仏式の葬儀や法事の際に引き出物や香典返しをするときは、品物としてお酒を選ぶことは避けた方がいいでしょう。
相手によっては、お酒を贈ったことで「常識を知らない、マナーが悪い」と思われてしまうこともあるかもしれません。特別な理由がない限り、香典返しでお酒は贈らないようにするのが無難です。
葬式や通夜でお酒をふるまわれるのはいいの?
一方、仏式であっても、葬式や通夜ではお酒がふるまわれることがあります。
香典返しの品物としてタブーであり、しかも、まだ喪が明けていない葬儀の席で、お酒を口にしてもいいのかと疑問に思う方もいるでしょう。
これには、それなりの理由があります。お酒(特に日本酒)は、お米が生命の源と考えていた日本にとって、米を原料として作るお酒は、死の穢れを遠ざけてくれると考えていたという説があります。
これは神道の考え方にも通じるものですが、日本の葬式においてはこの考え方が残り、葬式や通夜の席でお酒を口にして穢れを取り除くという風習が生まれたというわけです。
参考:はじめての喪主葬儀・葬儀後マニュアル(吉川美津子 秀和システム) 54ページ
香典返しにお酒を贈っていいケースとは?
先に、香典返しの品物としてお酒はタブーと申しましたが、実は地域によっては、法事の引き出物としてお酒をお渡しするところもあります。引き出物としてなぜお酒を渡すのかといえば、葬儀や通夜の席でお酒をふるまうのと同じ理由です。
特に米どころの地域では、お酒を引き出物としてお渡ししているようです。
また、故人が特に好んでいたということで、故人を偲んでもらうために、あえてお酒を贈るというケースもあるでしょう。こうした地域の風習が根付いているところや、理由がはっきりしている場合であれば、香典返しの品物としてお酒を選ばれてもいいかと思います。
もちろん、お酒を贈ることに、相手の方も納得されているということが大前提です。
香典返しにお酒を贈る場合ののしは?
香典返しのお酒につけるのしは、他の香典返しと同様に、黒白、または黄白の結びきりののし紙(掛け紙)を付けるようにします。表書きは水引の上に「志」と書くのが一般的です。水引の下は喪家の名字だけ、または「〇〇家」と書くようにします。
お酒は化粧箱に入っていれば、その箱の上から掛け紙を付けます。瓶のままや紙に包んでいるタイプなら、瓶に沿って掛け紙を巻くようにすればいいでしょう。
お酒以外の香典返しのタブー
香典返しの品物を選ぶときの基本としては、使ってあとに残らないもの、いわゆる「消えもの」がいいとされています。ですから、常識的に考えて、あとに残るようなものは避けるようにします。
また、消えものであっても、仏事にはタブーとされている食べ物が幾つかあります。
その一つが「昆布」です。昆布は繁殖力が高いことから、昔から祭事に用いられ、「よろこぶ」という頃から祝い事の品として選ばれてきました。これらの理由から香典返しの品物としてはふさわしくないといえるでしょう。
また、「四つ足生臭もの」とよばれる肉や魚も、香典返しの品物としてはタブーとされています。
参考:【図解】身内が亡くなったときの届出と手続きのすべて 2022年版(宮田浩志 マイナビ出版) 35ページ
お酒以外ならどんな品物がおすすめか
以上のようなことから、香典返しにおすすめの品としては、不祝儀を残さない、後に残らない「消えもの」ということになります。
ただし、食べ物であっても、生に近いような、あまり長持ちしないようなものは避けるのが基本です。食品であれば、砂糖やふりかけなどの調味料や、お茶や紅茶、海苔など、日持ちするものがよいといえるでしょう。
また日常品であれば、石鹸や洗剤、タオル、シーツなど、幾らあっても困らず、使ってなくなるものはやはり重宝します。
また、湯飲みやお椀・塗り箸などの陶磁器や漆器などは、「消えもの」と思わない人もいるかもしれませんが、陶磁器は「故人が土に帰る」、漆器は「不幸を塗りつぶす」という意味を込めて、香典返しとして用いられることも多い品物の一つです。
参考:ビジネスマンのための常識力教養力 養成講座 4冊セット(日常生活向上委員会 SMART GATE) 185ページ
カタログギフトならお酒を選べる
一般的にお酒を贈るのはタブーとされていますが、カタログギフトで選んでいただく分には問題ないといえるでしょう。その際は、お酒を選べるカタログギフトであることを事前に確認しておくことはいうまでもありません。
また、お肉や魚など、一般的にタブーとされる品物でも、間接的に選んでもらうのであれば、タブーに触れることはないと考えられます。こうした理由から、相手に好きな商品を選んでもらえるカタログギフトは、若い世代を中心に人気です。ただし、贈った先がカタログギフトに対して抵抗感のない相手であることは、考えておく必要があるでしょう。
まとめ
・香典返しとしてお酒を贈ることは、一般的にはタブー。
・ただし、地域や場合によっては、引き出物や香典返しとしてお酒を贈ることも。
・カタログギフトであれば、お酒やその他の品物も間接的に贈ることができて便利。