故人と親しかった人や関係のあった人を招いて行う一般的な葬儀のほかに、身内だけでこじんまりと行う家族葬があります。こうした家族葬では、香典のやりとりや香典返しはどのように行うべきでしょうか。ここでは、家族葬の香典返しについて詳しく解説します。
目次
そもそも家族葬とは?
そもそも家族葬とはどのような葬儀なのでしょうか。
一般的な葬儀は、家族のほかに親族や故人と親しかった人など、大勢の人々を招いて行うのが通例です。こうした葬儀は規模が大きくなればなるほど、時間や経費もそれなりにかかってきます。
中にはこのように規模が大きくなることを避け、家族などの身内だけで静かに故人を弔いたいと思う人もいます。そうした場合に執り行うのが家族葬です。
家族葬は特に決まった形というものはありません。家族(もしくは近親者)だけで葬儀を済ませ、火葬までを行い、後日、本葬を行わない形を家族葬と呼んでいます。
つまり家族葬の場合、一般的な葬儀とは異なり、家族や近親者以外の者が葬儀に参列して直接香典を渡す機会がないといえるでしょう。家族葬を行って香典を頂いていない場合は、香典返しを行う必要はもちろんありません。
参考:葬儀・法要・相続 マナーと手続きのすべて(主婦の友社) 56ページ
家族葬の香典返しは不要? なしでもいいの?
故人が亡くなったことを知ったとき、家族葬だと聞いた場合は、参列したいと申し出ることはマナー違反です。遺族の意向を汲み取り葬儀には参列せず、後日お悔やみを述べるようにしましょう。
ただし、葬儀には参列せずとも、香典を渡したいと思う人もいるでしょう。相手が香典を辞退している場合、無理に渡すことは相手の負担にもなりますので、これは避けたいものです。
ただし、家族葬を営んだ側としては、相手が香典を渡したいと申し出た場合、頑なに辞退するのも、相手に対して失礼です。相手の気遣いを汲み取って、快く受け取るようにしましょう。
また、香典を頂いた方には、一般的な葬儀と同様に、後日、香典返しをお渡しするようにしましょう。こうしたやりとりの煩わしを避けるために家族葬を営みたいと考える人もいるでしょうが、葬儀は家族だけでなく、故人と社会との関係も考え合わせる必要があります。
やはり礼に対しては礼で尽くすということを心がけたいものです。
家族葬で親戚への香典返しはどうすべき? 金額の相場は?
家族葬では、一般的な葬儀のように香典を頂かないケースが多いでしょう。
ただし、親戚を招いた場合、香典を頂くこともあるでしょう。あらかじめ、香典は不要ということを伝えておけば、香典返しは必要ありませんが、それでも香典を頂いた場合は、親戚であっても、お礼の気持ちとして香典返しを行うことは必要でしょう。
家族葬といえども、マナーとしては一般的な葬儀と同じです。四十九日が明けてから、頂いた香典の「半返し」を心がけるようにするといいでしょう。
ただし、さまざまな事情で家族葬を営むわけですから、遺族が負担になるような香典返しを行うことはありません。
家族葬で会社の方への香典返しはどうすべき? 金額の相場は?
故人や身内の会社の方から香典を頂いた場合の香典返しは、その香典のケースによって変わってきます。
香典が会社名義である場合や会社の規定として香典が出されている場合、会社は経費として香典を用意しているので、香典返しの必要はありません。また、会社として香典返しを受け取らないということが規定となっていることもあります。
ただし、こうした規定は普段知ることはないので、自分の勤め先であれば確かめるようにするといいでしょう。
一方、会社の人であっても、表書きが個人名(もしくは連名)であれば、個人的に香典を渡して頂いたことになるので、香典返しはきちんと行うようにします。その場合、やはり「半返し」を基本として、頂いた額の3分の1から半額程度の品物をお返しするようにしましょう。
家族葬の香典返しの時期は?
家族葬は基本的に、家族もしくは近親者だけで行う葬儀ですから、一般的な葬儀のように参列者から香典を頂くことを想定して香典返しを事前に用意することは少ないはずです。
家族葬で香典を頂くケースとしては、当然ながら葬儀の最中よりも後日の方が多くなるでしょう。しかし、葬儀の後で頂く香典に対して、その都度香典返しを用意していたのでは、せっかく静かに故人を弔いたいと家族葬を選んだのに、遺族としての負担が増えてしまいます。
家族葬で香典返しを行う場合、香典を頂いた方々に対してまとめてお渡しするようにしましょう。時期としては、一般的な葬儀と同様に、忌明け(仏式では四十九日)の後が良いでしょう。
家族葬を行う遺族によっては、無宗教(無宗派)ということもあるでしょうが、そこは世間の常識に合わせて、時期として忌明け後とするのがよいかと思います。
参考:最新版新しい葬儀・法要の進め方&マナー(主婦の友社) 96ページ
家族葬の香典返しの挨拶状は?
家族葬の香典返しにおいても、一般的な葬儀の香典返しと同様に、挨拶状は添えてお渡しするようにしましょう。
ただし家族葬の場合、一派的な葬儀とは、挨拶の文面が少し異なってきます。家族や近親者以外は参列しないのが原則ですから、会葬へのお礼は書かないようにします。
内容としては、時候の挨拶は避け、家族のみで葬儀を済ませたことと、遺族の近況や現在の様子、香典へのお礼などを書くようにします。
家族葬の挨拶状・お礼状の文例
去る●月●日 葬儀は 近親者のみで滞りなく済ませました
生前中は御交誼を賜り 誠にありがとうございました
永眠に際しましては ご鄭重なご厚志を賜り 厚くお礼申し上げます
つきましては 供養のしるしに心ばかりの品をお送りいたします
本来であれば 拝趨の上ご挨拶申し上げるべきところですが
略儀ながら書中をもってお礼申し上げます 敬具●年●月 ●●●●
挨拶状の基本としては、句読点は打たないこと。また、香典を頂いたことについては、直接的に記すのではなく「ご厚志を賜った」と書くようにします。四十九日の法要を執り行ったのであれば、その点について触れてもいいかと思います。
参考:心のこもった 葬儀・法要のあいさつと手紙 マナー&文例集(杉本 祐子 主婦の友社) 127ページ
家族葬で香典を辞退したのに頂いた場合は?
香典を辞退しているのにもかかわらず、例えば郵送で香典が届いた場合など、相手も辞退しているということを承知の上で送っているはずです。また、葬儀のあとに弔問に訪れた人が香典を渡したいと申し出た場合、無理に断ってはせっかく香典を用意してくれた相手に失礼です。
こうした場合、相手の気持ちを汲んで、気持ちよく受け取るようにしましょう。
そして後日、一般的な香典の場合と同様、香典返しはきちんと行いましょう。この場合も、やはり「半返し」を基本として、3分の1から半額程度の品物をお渡しするのが礼儀です。
まとめ
・家族葬での香典返しも、一般の葬儀の香典返しと同じ。お返しの金額は「半返し」が基本。
・香典返しの時期は、忌明け(四十九日)の後に、まとめて行うようにしよう。
・香典返しを行う際は、挨拶状やお礼状を一緒に添えるようにしよう。