葬儀を終え、四十九日の法要も無事に済ませたあとに準備しなければならないのが「香典返し」です。ところで、香典返しとは、そもそもどのような意味をもっているのでしょうか。ここでは、香典返しの意味と、それぞれの品物に込められた意味について解説します。
目次
香典返しの意味とは?
香典返しとは、文字通り香典を頂いたことに対してのお返しを意味しています。葬儀の際、香典を頂いた弔問客の方々に、即日返しとしてお返しを贈ったり、またお返しを頂いた経験をお持ちの方もいるかもしれません。
香典返しには、香典を頂いた方への感謝の意味を込めてお返しするという大きな意味があります。
即日返しはその場でお返しの準備をするもので、近年の葬儀においては、全国的に普及している方法ですが、お世話になった方々への感謝の意味を込めてのお礼となると、即日返しだけでは十分ではないと感じる方もいるかもしれません。
実際、即日返しではどれぐらいの香典を頂いたのかその場ではわかりませんから、通夜や葬式には、粗供養品をお渡しし、本来の香典返しは四十九日の忌明け以降に贈ることが多く行われています。
また即日返しを行った場合でも、多額の香典をいただいたい方へは、改めて香典返しを行うことがマナーといえるでしょう。
参考:身内が亡くなった時の手続きがまるごとわかる本 2021年最新版(晋遊舎) 33ページ
香典返しの「志」の意味は?
香典返しののし(掛け紙)の表書きには、多くの場合「志」という一文字が書かれています。この「志」にはどんな意味があるのでしょうか。
志という一字は、多くの意味が込められている言葉であり、基本的には、心の持ち方や信念を表す言葉といえます。仏事における「志」は、心を込めたものであることを表しており、亡くなった人への供養としてお供えものにも添えられる言葉ですし、香典返しに用いる場合は、相手への感謝の気持ちを表すことになります。
謝意を表すと同時に、「わずかばかりの品ですが、お納めください」という一歩引いたニュアンスがあります。
参考:冠婚葬祭マナー大事典(学研ライフ&フーズ編集室 学研パブリッシング) 32ページ
香典返しに食べ物を贈る意味
香典返しに用いられる品物として多いのは、やはり「食べ物」ではないでしょうか。
香典返しに食べ物を贈るのは、「不幸をあとに残さない」という意味から、食べてしまえばなくなってしまう、いわゆる「消えもの」を選ぶためと考えられます。
ただし、同じ消えものであっても、魚や肉などは、「四つ足生臭もの」のタブーとして避けられています。よく瓶詰や缶詰の詰め合わせものに、肉や魚を加工した、例えば鰹節や佃煮などの食品があるので、不謹慎ではないかと思われる方もいるかもしれませんが、仏教ではどちらかといえば「生もの」を禁じていますので、それほど気にする必要はないでしょう。
ただし、それでも気になる方がいる場合は、そうした詰め合わせの品物は、香典返しの品としてリストかから外しておいたほうがいいかもしれません。
香典返しに海苔を贈るのはなぜ?
香典返しに海苔を贈る理由としては、精進料理に用いられる食材であることが挙げられます。精進料理では、魚や肉を使いませんが、青森県の郷土料理には、豆腐をすりつぶしたものをウナギの皮に見立てて海苔で巻いた「精進うなぎ」という料理がありました。
このように海苔は、古くから精進料理の食材として用いられていたため、香典返しの品物としても、定着してきました。
海苔は「寿司」をはじめとして、日本の家庭では利用範囲も広く、ある程度日持ちするので便利な食材です。香典返しの品物の候補としては、お茶とともに真っ先に挙げられるのではないでしょうか。
香典返しにしいたけを贈る意味とは
香典返しの品として、しいたけ(特に干ししいたけ)を選ぶのも、海苔とだいたい同じ理由です。しいたけは精進料理に利用されることが多いため、香典返しの品物として、やはり人気があります。
特に、しいたけで出汁を取る料理を好む人や、料理の多い地方や地域では、重宝がられる食材です。干ししいたけも海苔と同様に大変保存が利く食材の一つです。
香典返しで用いる際は、ふだんなかなか口にすることのない「どんこ」などの高級食材をチョイスしてみてはどうでしょうか。
香典返しにお茶を贈る意味
香典返しの定番ともいえる商品の一つに「お茶」があります。
なぜお茶が選ばれるのかといえば、やはりお茶は仏教とは切っても切れない関係にあるかといえるでしょう。葬儀や法要の場でも、一息つける場所には必ずといっていいほど、お茶が用意されています。
僧侶にとってお茶は薬として用いられたこともあり、また、境界を区切るという意味をもっていたともいいます。
つまりお茶をふるまうということは、その家に招かれたことを示しており、葬儀でお茶を振る舞うことは、この世の境界を越えて、故人があの世へと旅立つことを意味するともいえるわけです。香典返しにお茶を配るのは、そうした意味も込められているようです。
香典返しに梅干しを贈る意味
梅干しも香典返しの定番的な品物として選ばれています。栄養価が高くて健康に良く、日持ちもするという優れた食品ですが、独特の酸っぱさや塩分の濃さが敬遠されがち。しかし、最近では、スタンダードな梅干し以外にも、かつお梅やしそ漬けなどのほか、塩分控えめで、酸っぱさを抑えたフルーティーな梅干しも登場しています。
香典返しには、紀州南高梅などのブランド梅を使った高級品などを選んでみてはいかがでしょうか。
香典返しに塩を贈る理由とは?
香典返しに添える塩の多くは、「お清め塩」を呼ばれるものです。葬儀でお渡しする会葬礼状や、香典返しでも即日返しの場合に付けることはありますが、忌明け後に贈る香典返しには付けないことがほとんどです。
お清め塩の目的は、葬儀を終えて帰宅した人が、邪気から身を清めるために使うものです。もともとは神道で用いられるもので、仏教によって(浄土真宗など)は、お清め塩を使わないこともあります。
使い方としては、葬儀を終えて、玄関から家に入る前に、自分の身の胸、背中、足元へ一つまみずつ撒いていきます。体に撒いた塩を払ったあと、残った塩は足元に撒き、塩を踏みながら家へと入ります。家族がいる人は、家に入る前に玄関で塩は振りかけてもらっていいでしょう。
参考:一生使える、美しい女性のマナー(篠田弥寿子 PHP研究所) 185ページ
まとめ
・香典返しとは、葬儀に参列していただいたことへの感謝の気持ちを込めたもの。
・海苔やお茶など、香典返しで贈る品物のそれぞれの意味を知って贈るようにしよう。
・感謝の気持ちを込めて、普段口にしているものよりもワンランク上の品物を選んでみよう。