香典返しを頂いた際、「お清め塩」と書かれた小袋を渡されることがあります。一体どのように使えばいいのか、知らないと迷ってしまいます。ここでは、香典返しと一緒に渡される「お清めの塩」について、その意味や使い方などについて詳しく解説します。
目次
お清めの塩の意味と由来
お清めの塩は、読んで字のごとく、葬儀に関わった人々が、死を招いた穢れ(けがれ)を払い除け、それぞれの身を清めるために用いるものです。
この風習は、日本古来のもので、その由来となったのは、イザナキノミコトが妻であるイザナミノミコトを追って黄泉(よみ)の国を訪ねて邪気に追われ、この世に舞い戻ってきた際に、身を清めるために海水を使って禊(みそぎ)を行ったという伝説からきているといわれています。
かつての禊のやり方としては、実際に海水を使って身を清めていましたが、いつしか海水の代わりにそこから生み出される「塩」を用いるようになり、葬儀で用いる「お清めの塩」として現代にまで伝わっています。
参考:ニッポン風物詩(とよざきようこ、ステュウットヴァーナム‐アットキン IBC PUBLISHING) 84ページ
「死者の霊」を払うものではない
こうした歴史的な背景を考えると、お清めの塩は仏教の習慣ではなく、日本の神道に由来していると考えらえるため、浄土真宗など宗派によっては、お清めの塩を用いないところもあります。
しかし、お清めの塩は死そのものを「穢れ」と考えるのではなく、死が招き寄せる穢れを払い除けるという意味があり、「死者の霊」を払い除けるという意味ではありません。
葬儀や通夜の後、香典返しに塩が添えられることも
こうした背景から、お清めの塩は、葬儀場などの出口付近に、帰宅する参列者が跨いでいけるように撒いておくこともあります。
また、葬儀や通夜の参列者のそれぞれに、会葬礼状や香典返しの当日返しと一緒に「御清めの塩」などと書かれた小さな袋に入れて添えることもあります。
葬儀や通夜の会場から自宅へ戻った際に、自分の身を清めていただくという意味を込めてお配りします。
お清めの塩の使い方は?
さて、自分の身を清めるためにお清めの塩を用いることはわかりましたが、どのように使ってよいのか、迷う人も多いのではないでしょうか。
身を清めるのは、穢れを払い除けるためなので、家の中に穢れを持ち込まないよう、玄関に入る前に用いるのが正しい使い方です。
通夜や葬儀でお清めの塩をいただいたときは、渡された小袋の封を切って用います。また、お清めの塩をいただいていないときは、家族の人などに頼んで塩で清めてもらうとよいでしょう。
使い方としては、自宅の玄関の前に来たら、入るまえにお清めの塩を一つまみずつ、胸、背中、肩、足元へと振りかけます。振りかけるのは、衣服が汚れない程度、ほんの少量でいいでしょう。衣服についた塩は、手で軽く払い落とすようにします。
振りかけたあと袋に残った塩は玄関前に撒き、塩の袋は衣服のポケットなどにしまってから、塩を踏むようにして玄関に入ります。塩が残ってしまうと、残りの塩をどうしていいのか、迷ってしまいますので、清めたときに、すべて撒いておきましょう。
玄関がタイル敷きで、塩で汚れるのではないかと心配なときは、しばらくしてから掃除すれば問題ありません。
参考:使える!信頼される!見た目としぐさ マナーの便利帖(ブックビヨンド) 149ページ
お清めの塩を使い忘れたら?
忙しい生活の中では、ついうっかりお清めの塩を使い忘れたと気づくこともあります。もし使い忘れたとしても、心配いりません。元々は神道における儀式の一つとして行われてきた行為ですので、使い忘れたからといって、それでバチが当たるという考え方はありません。
玄関に入ってから忘れたことにすぐ気づいたのであれば、喪服のまま、もう一度玄関前に戻り、塩で清めてから入り直せばいいでしょう。
また、喪服を着替えたあとに気付いたのであれば、もちろんそのままで構わないのですが、どうしても気になるようであれば、もう一度喪服に着替えてからやり直せばいいでしょう。要は本人の気持ちの問題です。
香典返しに塩が入っていないこともある?
上記に記したように、浄土真宗などでは、お清めの塩そのものを否定していますので、香典返しに入っていないことがあります。また、そもそも香典返しにお清めの塩を入れていないケースもあります。
葬儀や通夜から戻ったときに、お清めの塩が付いてないことに気付いたときは、喪家の考え方を尊重し、お清めで塩を使わないという方針に従ってもよいでしょう。
しかし、どうしても塩で清めたいというのであれば、家族の人に声をかけて玄関に入る前に清めてもらうようにします。また、家族が不在だったり一人のときは、帰りがけのスーパーやコンビニで小さめの食塩を購入して使うようにすればよいでしょう。
参考:葬儀・法要・相続・お墓の事典オールカラー(浅野まどか 西東社) 44ページ
郵送された香典返しに塩が付いていた場合は?
香典返しの当日返しにお清めの塩を付けるのは、自宅に戻る際に、玄関に入る前に身を清めてもらうことが目的で付けるわけですから、香典返しを郵送する場合は必要ありません。
しかし、郵送された香典返しに塩が付いていた場合、どうしたらいいでしょうか。
この場合、塩を使う必要はもちろんありません。当日返しに付けていたお清め塩を、後日の香典返しに付けてしまったわけで「相手がうっかりしていたんだな」と思っても差し支えないでしょう。
お清めの塩が余ったら? 処分はどうする?
中には「食用できる」と書かれているものありますが、合成した工業塩を使用している場合、食用には適しませんので、ふつうに燃えるゴミとして処分して構いません。
もちろんバチは当たりませんから心配はいりませんが、気持ちの問題として抵抗がある人は、少しの量ですので、庭先などに撒いたりすればいいかと思います。
塩が入っていた袋は、そのままゴミとして廃棄すれば問題ないのですが、どうしても気になるのであれば、元々は神道の風習ですから、正月などに行われる神社の左義長(どんど焼き)などで焼いてもらえばよいでしょう。
まとめ
・お清めの塩は、日本古来からある神道由来の風習。
・浄土真宗など、宗派によってはお清めの塩を行わないことも。
・行っても、行わなくても、個人の自由。それぞれの信条や考え方で行おう。